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2006年10月11日 (水)

NO SIDE 第12話~真実1~

私は彼がトイレに行っている隙に
録音用のテープを交換した。
それにしても彼の思い出の話は
ストーリーとしては完璧だった。
ミウとの出会いから、彼女に恋をするまで、
細かい彼女とのやりとりなど、
しっかりと覚えていた。

(…なのになぜ?)

私はすっかりと冷めた残りのコーヒーに
口をつけた。
「やあ、セナさん」
突然自分にかけられた声に驚いて振り向くと、
そこには小野田先生が立っていた。

「先生…。ここにいたのですか?」
「うむ。君の事が心配でね。
君の事だから、きっとここに来ると思って、
先回りしていたんだ」
「そうですか」
「どうだね、トキヤくんは?」
「本題に入るのはこれからですけど、
チャペルに行くのは、
少し早すぎたかもしれませんね」
「仕方ないよ。彼はまだ事実を
知らないのだからね」
「そうですね…。
先生、彼はあの事実を
受け止められるでしょうか?」
「そうだな…。君次第じゃないかな」
「わたし次第…ですか?」
「うむ。
ただ彼が事実を知ったところで、
君がつらくなるのではないかと
心配だよ」
「先生、ありがとうございます。
でも私のことはいいです。
彼が事実を受け止めて、
そして…」

(そう…。それが私の役目だ)

「そうか…。彼の事は頼んだよ。
あまりあせらないで、
ゆっくりと彼とつきあってあげなさい」
「…はい」

先生の言うとおりだと思った。
彼が事実を知れば、
彼は本当に苦しむだろう。
そして私の気持ちは、
きっと永遠に報われない。
それはよくわかっている。
でも…。

(これでいいんだよね、ミウ?)
(彼が事実を受け止めて先に進む事が、
あなたの望みよね?)

今となっては、ミウの気持ちを
確認する事はできない。
でもきっと彼女なら、
私と同じ選択をしただろう。

「おまたせしました」
彼がトイレから戻ってきた。
そして私は再び、
彼と未来へ歩きはじめた。

Ob5_1

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